街角景気的な話し7・・建築費インフレの時代、既存活用に見える地方都市の“横ばい力”

 

 弊社サテライトオフィスのある島根県松江市の一等地ともいえるNHK松江放送会館跡地の入札があったようです。

日本の夕日100選にも選ばれた宍道湖畔の白潟公園に近接しており、まさに風光明媚ともいえる場所にあります。また松江駅からも徒歩圏内であり、以前からその行方が気になっておりました。

土地面積が約1,000坪あるため、当初はマンション用地あるいはホテル用地になるのではと想像しておりましたが、既存建物を活用する形での利用も想定される落札となったようです。

*今回の落札後の具体的な活用方針は公表されていないようですので、以下はあくまで仮定に基づく試算となります。

山陰ケーブルビジョン、NHK旧松江放送会館を落札 8億8888万円 | 山陰中央新報デジタル

懇意先のデベロッパー担当によると入札情報は確認しており、検討もしたようですが、昨今の建築費高騰の影響により見送りとなったとのことでした。

試しにマンション事業を単純試算してみます。

用途地域は商業地域、容積率は500%ですので

土地約1,000坪 × 容積率500%
= 延床面積 約5,000坪

想定建築費
2,000千円/坪 × 5,000坪
= 約100億円

仮に11階建て、総戸数200戸前後とすると
戸当たり 平均6,000万円程度 になりそうです。
*参考までに、20坪程度(3LDK)の最近の新築マンションは、30百万円台〜40百万円前後という印象です。

一方、既存建物を活用する場合を考えてみます。

現在の建物は4階建てのようですので、仮に同規模(既存延床面積約:1,120坪)を新築した場合の単純試算は

想定延床面積 約1,200坪
想定建築費 2,000千円/坪

= 約24億円

(アンテナ等設備は除く)

周辺のNHK跡地と同じ用途地域(商業・80/500)の
2025年公示地価は

松江市天神町134
278,347円/坪

これを単純に当てはめると

278,347円 × 1,000坪
≒ 約2.8億円

今回の落札価格は
8億8,888万円

土地価格を差し引くと

8.8億 − 2.8億
≒ 建物価格 約6億円

これを新築費用と比較すると

6億 ÷ 24億
= 約0.25

つまり単純比較では、新築した場合の約4分の1の水準ということになります。

1960年代築の建物とのことですから減価償却は進んでいると思われますが、NHKの施設であったことを考えると、建物スペックは一定水準を維持している可能性もあります。

もちろん改修費用は必要になるでしょうが、新築前提で土地取得する場合と比べれば、コスト構造は大きく異なります。

建築費の高騰が続く現在、地方都市では一等地であっても新築開発のハードルが高くなりつつあります。
人口増加を背景にした都市部とは異なり、地方では需要の見通しも慎重にならざるを得ません。

その意味で今回の入札は、既存建物を活用することで事業成立性を確保する、まさに現実的な最有効利用といえるのではないでしょうか。

インフレの時代には、建物を新しく建てること自体が難しくなる一方で、既存のストックをどう活かすかという視点がより重要になります。

地方都市においては、拡大や再開発だけが街の活力ではなく、

「既存資産を活かしながら地域の機能を維持していく--いわば”横ばいの力”」

もまた大切なのかもしれません。

宍道湖の夕日を望むこの場所が、そうした新しい地方都市のあり方を示す事例の一つになるのか、今後の活用を引き続き見守りたいと思います。

 

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